切妻屋根、寄棟屋根、片流れ屋根など、木造建物には様々な屋根形状があります。
屋根のカタチは建物の外観のイメージ、意匠の決め手になります。
小屋の屋根を考える時にどんなことに注意すれば良いのでしょうか?
プロでも事故が多い屋根作業
屋根は高所での作業が多いので危険が伴います。
作業場が2mを超えると安全帯の使用が義務付けられています。
建設のプロでも「墜落・転落」の死亡事故がダントツトップです。
さらに屋根は施工でミスがあると雨漏りの重大な問題になりますので、足場を確保し安全のための養生をしっかり計画実行したいですね。
わずか数十センチ高くなるだけでも
基礎の高さも計算しておかないと作業で問題になります。
2m前後の高さでの+30cmはとても大きな差になります。
図面上ではたった30cmですが屋根上に上ってみるとすごく高く感じます。
足場の確保を検討したり安全帯の取り扱いを考えましょう。
傾斜の付け方はトラスと小屋組み
切妻屋根を前提にすると、キットハウスではトラスという三角の部材で屋根傾斜をつける方法が主流です。
一方で大工さんが在来工法で使う「梁」と「束」を使う小屋組みがあります。
建築では屋根の組み方でさまざまな議論がありますが、どちらの構造も完成すると強度計算上で明確な差はありません。
屋根を支えるのに求められる強度が同じ場合、使用する部材形状や数量に大差がないのです。
二つの工法の違いは、「組立ててからのせるか」「のせてから組み立てるか」ということではないでしょうか?
先に傾斜を組み立てるトラスは重い
キットハウスによく使われるトラスは、一般的に直角三角形や二等辺三角形の部材です。
高所作業での角度切りは失敗が多く、平場であらかじめ落ち着いて製作できるのはDIY初心者向きです。
トラスを選んだとしても高所作業がなくなるわけではなく、重いトラスをどのようにのせるかや、位置決めしたりトラス同士を結合させる作業もあります。
たくさんのトラスを据え付けるには手順をよく確認しないと手戻りになるので注意です。
小屋組みは部材種類が多く施工時間がかかる
小屋組みをするにもあらかじめ部材のサイズ加工ぐらいは済ましておきたいです。
棟木、小屋束、梁、軒桁…他にも多くの小屋組み部材が必要です。
設計時にはどこにどの部材を使うのはもちろん、どこから取り付けていくのか作業の順番をしっかり把握する必要があります。
小屋組みの方がトラスよりも屋根作業に時間を要しますので、作業中断時の雨天に備えた養生についても準備しておきましょう。
勾配と施工性
アスファルトシングルのメーカーでは勾配を最低でも三寸五分以上(約19.3度)としています。
雨水の流れや汚れの堆積による屋根材の劣化を抑えるためだと思いますが、施工のしやすさはこのたった五分で大きく違う感じがします。
三寸(約17度)の勾配はモノを置いてもギリギリ滑り落ちない傾斜です。
三寸五分だと滑り落ちてしまいます…
この傾斜でも屋根上で長時間作業を続けると足首が痛くなります。
屋根勾配は急なほど雨水排水が良く、積雪で建物躯体に負荷がかかりませんので良いことが多くなります。
しかし、その分、施工に時間がかかることを理解しておくべきです。
小屋に最適な屋根のカタチは?
木造建物の屋根形状は大きく分けると切妻屋根、寄棟屋根、片流れ屋根、陸屋根です。
形状は他にも入母屋や腰折れ屋根、マンサード屋根などあります。
はじめて小屋作りをする方は「切妻」か「片流れ」にするべきで、建築作業が二回目以降で慣れてから寄棟や陸屋根などを検討された方が良いでしょう。
寄棟屋根はカッコ良いけど…
寄棟屋根は意匠も良くて、構造も安定しているので住宅に多く採用されてます。
自分でDIYして楽しむには、ちょっと設計施工が難しいでしょう。
切妻屋根や片流れ屋根に比べると、部材の点数が多くなり加工も角度が複雑になります。
複雑な加工は失敗リスクが高くなり、作業の手戻りや時間ロスが大きくなります。
小屋には切妻か片流れがおすすめ
屋根は建物の印象を決める重要なパーツです。
作業に少しでも欠陥があるとすぐに雨漏りしてきます。
平面部分が多くて長方形なら設計も作業も理解しやすいです。
初心者の小屋作りなら設計と施工が楽な切妻屋根か片流れ屋根がおすすめです。
陸屋根は避けたい
ビルでよく見る陸屋根(平屋根)は避けるべきです。
木造住宅でも稀に採用されますが、防水施工が難しく維持するためのランニングコストもかかります。
傾斜で流さないので屋根資材とはいえ雨水に長期で濡れた状態になることは、耐久面で好ましくありません。
屋根形状の中ではダントツで雨漏りの可能性が高いと思います。
近年は防水性能と高耐久性の防水資材も豊富にありますが、セルフビルド向きの屋根形状ではないでしょう。
デザインはカッコイイんですがね…。
まとめ、雨漏りと転落のリスク
谷を作らない方がイイ
DIYで屋根を設計するときに避けたいのは「谷」を作ることです。
切妻屋根は棟(頂点部分)が高いので山としますが、その反対に継ぎ手が低くなる谷を作らない方が良いでしょう。
谷には雨水がたくさん集まり滞留しやすく資材の耐久性に不安があります。
この部分に施工不備があるとまたたく間に雨漏りし始めて、残念な結果になりやすいからです。
できれば屋根形状に谷がない方が良いですね。
太陽光発電パネル設置ならより慎重に
小屋暮らしでは太陽光パネルで発電する方もいるでしょう。
屋根にパネルを設置する時には取付方法や設計をしっかり確認してからにしましょう。
架台や配線など屋根や壁に加工しなければなりません。
雨漏りのリスクが高まるので、プロの建築施工業者でも屋根には手を加えたくないものです。
屋根材を加工しないようにする工夫や丁寧な作業が求められます。
屋根は作業手順と足場確保がカギ
「せっかく作る小屋なら自分の好きな屋根形状にしたい…」という気持ちはよく理解できます。
屋根は施工中の転落や雨漏りという重大な問題が発生する部分です。
わずかな隙間にも雨水は入り込み、複雑な屋根構造にするほど雨漏りのリスクが高まります。
屋根の組み立てはこの二つが重要です。
- 図面で施工手順を理解する
- 安全に作業するために足場と道具を計画する
図面で構造を理解できていても、時系列で組立手順や動きも想像しましょう。
屋根構造が複雑になると手が入らなくて後から取り付けできない部材もでてきたりします。
足場の養生は地味な作業ですが、高所作業を正確で丁寧に仕上げることができます。
安全に作業しやすいように、まず、仮設の足場を作ることを計画しましょう。
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