建物を設計されるセルフビルダーに建築確認申請について質問を受けます。
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この設計は確認申請をパスできますかねぇ…?
設計だけではわかりません。
防火地域や準防火地域では建物に求められる耐火基準が厳しいのです。
不燃材や難燃材等の使う資材によって判断されます。
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この建物には税金がかかるのかなぁ…?
皆さんは課税や強度ばかり注目しますが、木造は防火が大事です。
木造の防火のことを考えてみます。
大切です。防火の知識
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例えば屋根材のかやぶき屋根などは、火の粉が飛んできたら一瞬で燃えうつります。
そんな建物ばかりだと火事がどんどん広がり、江戸時代の大火事同様の大惨事を招きます。
市街地では燃え移らないように、燃えやすい建材を使う事を制限してます。
人口密集地での火災は、多くの人命財産が奪われます。
人里離れたところでポツンと一軒家が燃えて全焼するのとは、被害が極端に違うのです。
防火、準防火、22条区域、23条区域
防火地域に指定されるエリアは、駅前のように人混みが激しい所です。
特殊な建材を使わない限り、ログハウスのようなウッディーな建築物は建築不可です。
準防火地域は閑静な住宅街をイメージして下さい。
住宅街は木造が多いですが建材は延焼しないように不燃材や難燃材を使用します。
延焼防止のために不燃建材の使う箇所、方法が細かく指定され、設計に反映されてます。
この他にも建築基準法22条区域、23条区域、24条区域などがあります。
これらの区域は準防火地域よりも防火制限が緩くなりますが、使う建材に制限があることを理解しなければなりません。
小さな建物であっても場所によっては「そもそも建ててはいけない」という地域もあります。
撤去することになると多額の費用がかかりますので、事前に防火区域について調べておくと良いでしょう。
建築確認と納税、そして防火
DIYする人から質問が多いのは、税金の事です。
誰でも費用を増やしたくないもので、税負担を最小限にとどめたい気持ちはよくわかります。
税金の事とは別の指摘があることも知っておいてください。
小屋の建築指導は稀
小屋を建てた後、役所から指導が入る事を心配する人がいます。
建築確認申請をしていないからといって、役所から直接指導を受けるのは珍しいです。
市町村の建築指導課が申請を受け付けてますが、多忙であることが普通です。
小さな小屋が未申請かどうかの確認に行けるほど人員に余裕がありません。
しかし、誰かから役所に通報されたり、指摘が入ったなら役所としても対応しなければなりません。
そうでもない限り、明らかな建築基準法違反の小屋でないと、是正指導を受けることは稀です。
こちらは必ず見てます固定資産
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納税に関して、建築とは別の部署から問い合わせがきます。
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建築確認申請しなければ課税されないのでは?
という方もいますが、そうではありません。
市町村にもよりますが、毎年、航空写真で増改築を含めて未申請の建物がないかをチェックしています。
課税担当者にとって、建築基準や都市計画に沿った建物かどうかは関係ありません。
ドローンや航空写真等で見てから固定資産税の対象となる構造物があれば現地調査に来ます。
年単位の確認なので少し遅れてきますが、新たな建築物は見逃さずにチェックされています。
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黙って建築すれば納税の義務を免れる…
コレは間違いです。
パトロールしてる消防署員
税金のことを気にする方が多いですが、最も頻繁に現場を訪れるのは消防署員だと思います。
消防署員は消化栓点検や防火のためにいつも街中をパトロールしています。
木製小屋は燃えやすく延焼しやすいので、新しく建ったら必ず消防署員の目に留まります。
住宅地に木造小屋を建てると、消防署員が訪れて質問されることが多いです。
防火地域なら木造は目立ちますので、すぐに指導是正の連絡が来るでしょう。
構造強度は二の次
地震力や風圧、積雪荷重による倒壊も人命に関わることです。
構造強度を理解して設計しないと倒壊して被災することもあり得ます。
多くの場合、小屋は多少の設計不備があっても補強することで構造を安定させることができます。
建築にかかわる人にちょっと見てもらえれば、地震や台風に備えることができます。
平屋の小屋でしたら構造強度よりも、防火延焼のことを意識した方が良いでしょう。
法律は人命尊重
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建築基準法には換気や建蔽率、採光や高さ制限など様々な規定があります。
どれも先人が過去の苦い経験から「こうした方が良い」という安全の道しるべでもあります。
日本は地震国です。
倒壊した家屋で何度も被災し建物強度の見直しは今もされてます。
地震の脅威は火災もあります。
世界と比べて木造家屋の歴史が古い日本では放火は重罪です。
一瞬で多くの人命を奪う火災について法律は、特に厳しい基準を規定しています。
大火防止のため延焼をおさえる
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延焼とは、発生した火事が火元から他の建物、部屋などへ燃え広がることをいいます。
消化までの時間をかせぐためには、燃え移ることを防がなければなりません。
不燃材や難燃材など防火建材が売られてます。
不燃材(燃えにくい)>準不燃材>難燃材
軒裏や開口部に防火材料を使わなければならない規定は、燃え移りやすい箇所であることを表してます。
延焼ラインと呼ばれる「隣地境界線から3m」とかの基準は意識しておく必要があります。
撤去命令!ビル屋上の小屋
キットハウスを作ったあるお客様から、完成して一週間後に連絡が入りました。
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やっと完成したのに、消防署員から撤去してくれと指導されたのですが…
東京都内の主要な駅近くのビル屋上に木造の物置を建てたそうです。
屋上の床は弱い?
高いビルがある場所は人通りがたくさんあり、防火地域であることが多いです。
このケースでは消防署から撤去するように指導されたとのことです。
まず、そもそも防火地域では木造建物はほぼ建築不可です。
さらに建物の屋上に小屋を建築すると、高さ、階数など建築構造を変えることになり、それには増改築の建築確認申請が必要です。
その他にも斜線規制や高さ制限などいろいろな問題があると思いますが、防火上、撤去は必然です。
街を見渡すとビルの屋上にスチール物置を置いていますよね。
スチール製だからといって許されるわけではありません。
ビル屋上の床は荷重強度が強く設計されていません。
長期にわたり荷重を受け続けると破壊が生じる可能性があります。
他も大事ですが人命優先
小屋を作ったら役所の指導を受けるのは、建築指導、消防、課税の三か所だと思います。
公的機関ですが、それぞれ縦割りなので情報を共有することはあまりありません。
多くの市町村では工事届や建築確認申請を提出した段階でそれぞれに通知されます。
現実的な対応と指導の消防署員は親切
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地域をパトロールする消防署員の方は親切な方が多いです。
防火地域内だったり規制が厳しいエリアでない限り、いきなり「撤去してください」とは言われないことが多いです。
不燃材で覆ったり、境界から離してくださいなどと、適切な防火対策を指導されます。
消化活動の妨げとならないようにとか、消防到着までの時間を稼ぐ対策だったりと現実的な対応で、ほとんどが素人にも納得できる提案です。
消防に協力し防火は厳格に守るべき
建築基準法では多くの防火対策が規定されてます。
火災は自分だけでなく他人の生命財産を奪う大惨事になることがあります。
木造を建てるのでしたら、それを自覚しなければなりません。
消防の指導は最低限であり適切なことが多いです。
想定外の損害が生じる前にそれに従って是正しましょう。
自然素材で癒しをもたらす木造建築は、持続可能な再生建材としてこれからも注目され続けるでしょう。
一方で防火は人命にかかわる重大問題です。
木造は燃え広がりやすく危険な構造物であることを認識しましょう。
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