あのシートは要るの?
木造の建築現場で見かける、壁に張るシートは何のためなのでしょうか?
建築現場で「タイベック」と書かれたシートをよく目にしますよね。
小屋を作る方はこのシートを張りたがります。
「タイベック」は、デュポン社の透湿防水シートです。
このシートの役割はいったい何でしょうか?
結露を防ぐためには水蒸気のコントロール
結露は、壁の中でカビを発生させ木造の腐朽を早めます。
建築物の耐久性を低下させ、室内の居心地を悪化させます。
住宅において水蒸気の制御は大切な課題です。
断熱と結露
小さな建物において断熱設計施工すると室内の居住性が高まります。
空調エネルギーをわずかしか使わないエコハウスは、将来に向けても時代に合っている気がしますよね。
室内外で温度差が生まれます。
なので、空気に含まれる水蒸気の量も変化します。
結露を防ぐには高温多湿な空気が壁内に入ってきても、湿気をうまく屋外に排出する仕組みが要ります。
水蒸気のコントロールが結露対策のすべてと言っても良いのです。
壁材は水蒸気をよく通す?
えっ!合板は水蒸気を通すの?
壁材料の構造用合板や石膏ボードは水蒸気をよく通します。
材料の透湿抵抗値からみてもほとんどの建築材料は水蒸気を通します。
コンクリートや発泡系断熱材も同じです。
石膏ボードにおいては、抵抗値が0.5(㎡・h・mmhg/g)と透湿シートの0.4とほぼ変わりません。
材料の見た目の誤解ですが、水蒸気は材料内を自在に通過できるのです。
まずは建材が水蒸気を通すことを理解してください。
室内の湿度を低くする
- 室内は高湿度
- 屋外は低湿度
建物はこうなりやすいですよね…。
寒いと吐き出す息が白くなるように、人間はいつも水蒸気を排出してます。
外気温が低くて壁が冷たいと、水蒸気の一部が水滴となり結露になります。
できるだけ室内湿度を低くするために、水蒸気を屋外に排出したいのです。
3つの層で大切な各種シート
水蒸気の移動を制御するには、
- 壁内に入れない(気密)
- 壁内から出す(通気)
この仕組みが必要です。
それには層を作る設計が必要になります。
その時に重要な役割をするのがそれぞれの性質を持ったシートです。
気密防湿層
室内の水蒸気を壁内に入れないようにする層です。
防湿気密シートを使います。
その名のとおり空気のながれそのものを遮断し、湿気も通さない高気密シートです。
室内側に張ります。
電気配線などで気密シートをカットしなければならない箇所は先張りや気密テープで補修します。
張り方に関してネットで失敗例や指摘がたくさんあります。
要するに外気と接する壁、天井、床には、すべて気密シートを隙間なく丁寧に張るということです。
防風透湿層
長期において完ぺきに壁内に水蒸気の侵入を防ぐことはできません。
防風透湿層は壁内に入ってしまった水蒸気を屋外に排出する役目の層です。
そして雨水などで断熱材が濡れないようにする目的もあります。
そこに透湿防水シートをつかいます。
ミクロの穴で水蒸気だけを通し、水滴は通さない高度な不織布シートです。
皆さんが見かけるタイベックはこれにあたります。
通気層
通気層は18mm程のいわゆる隙間です。
透湿層から流れてきた水蒸気を屋外に排出する働きがあります。
通気層はシートで作る層ではありません。
胴縁などですき間の層をつくり、外気が流れるようにします。
水蒸気の通り道を乾燥状態にしておくことが大切です。
防湿気密・透湿防水シートの使い方
3つの層で結露対策するのが一般的です。
- 水蒸気を室内にとどめるようにする気密防湿層
- 壁内に入ってしまった水蒸気を排出する防風透湿層
- 出てきた水蒸気を運びだす通気層
どれかの層が欠けると壁内に水蒸気が滞留しやすくなり結露発生が危ぶまれます。
防風透湿層だけで安心する人が多い
よくわかんないけど、タイベックさえ張っとけば…
防風透湿層のタイベックシートを張るだけで安心する方がいます。
他の2つの層がないので、結露対策にあまり効果がありません。
室内側の気密防湿層がないので壁内に水蒸気が入ります。
壁が冷たい時はそこで結露が発生します。
もし、断熱材があれば濡れてしまい効果がなくなりカビの発生があり得ます。
シートを抜けた水蒸気は通気層がないので滞留します。
外装材とタイベックの間でとどまり結露やカビの原因となります。
防風透湿層だけですと結露対策は不十分です。
隙間なく張れればOK
シート張り作業は単純です。
特別な技術や道具は必要としません。
- 張る場所を間違えない
- シート量、胴縁、気密テープを計算して用意
- 設計時に換気、断熱も併せて検討
はじめてシートを張るとシワができたりカットで無駄がでます。
それでも隙間なく張れればOKです。
材料は多めに用意しておいて「隙間なく」をテーマに張っていきます。
シート張りに大切なのは丁寧さ
内装に接する防湿気密シートは配線や配管、コンセント設置などでカットがたくさんあります。
シートをカットしたら、気密テープで隙間なく仕上げる施工が重要です。
シートの継ぎ目は150mm以上を重ね合わせるようにします。
わずかな隙間でも水蒸気は入り込みます。
せっかくの気密防湿層がほとんど機能しなくなります。
シート内に水蒸気が入り込むと結露で断熱効果が得られません。
高価な断熱材でも意味がなくなります。
不器用な私はシートを破ったり三重になったりして無駄に時間がかかりました…。
多少雑でも隙間なく張っていけば、シートの効果が必ず得られます。
まとめ
大工さんや建築従事者でも厚い合板やコンクリートが水蒸気を通すことを知らずに誤解している人がいます。
断熱を考える時に避けては通れない結露問題は、3つの層の働きを理解しましょう。
- 気密防湿層
- 防風透湿層
- 通気層
水蒸気を通すシートと通さないシートは真逆の働きをします。
それを誤って張ってしまうセルフビルダーがいます。
それぞれのシートの働きを理解して丁寧なシート張りが正しい結露対策です。
シートのチカラで防げること
湿度管理は建築のプロでも難しいものです。
外気温差と換気を含めて同時に考えなければなりません。
建築物の湿度管理に失敗したら下記のことが考えられます。
- 臭う
- 断熱効果が得られない
- カビが発生
- 洗濯物などが乾かない
- 不快
ここでは「何となく張った方が良いのかなぁ…?」という方のためにシートのことについて紹介しました。
シート機能に様々な種類があり役割が違います。
うまく張れば快適な小屋暮らしを実現できます。
小屋を作る前にシートの機能をよく理解して適切に使ってみてください。
DIYでもできるのか?
シートを張る作業は、特殊な知識や道具はいらないのでDIYでも可能です。
YouTubeでシートの張り方をたくさん見つけることができます。
注意するところは、細かいところまで丁寧に張る事です。
少しでも隙間や穴があると意味がなくなったりします。
作業は難しくないです。
でも、時間がかかります!
シート張りの基本は丁寧に仕上げることです。
住宅建築のプロと呼ばれる人たちがシート張りを間違えたり、雑な張り方で性能を発揮できていない現場をよく目にします。
初めての素人作業でもそれを意識しておけばDIYのシート張りは必ず可能です。
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